“更待月を待てなくて”
*腐描写多めの蜜月夜話です。
ただイチャイチャしているだけのお話なので、
胸やけ体質の方はご遠慮くださいませvv
身動きに合わせてかすかに響くのは、
さわさわという布団カバーの擦れる音。
都内の街中ではまだそれほどに夜更けということもない時間帯で、
壁越しの隣家からのテレビの音や、
こんな時間まで塾通いか、中学生くらいの子供らの話し声が通るのとか、
明かりを落とした六畳間にも、結構いろいろ聞こえてくる。
それでも都心の繁華街のように、
真昼を模した煌びやかなネオンが灯るでなし、
窓の外に淡く垂れ込めた秋の夜陰に
蒼穹を頭上まで昇った月の明るみが紗のように滲んでいて。
そろそろ窓を開けっぱなしにして寝るのは控えた方がいい頃合いなのだなぁと、
そんな見晴らしからも伝えてくるよう。
二千年紀も過ごしてきた彼らにすればほんのちょっと昔、
この下界へとバカンスに降りて来たばかりのころには、
イエスの方がもっとずっと夜更かしをしてもいたものだが、
ここ最近では、ネットでのチャットだゲーム参加だといった格好にせよ、
よほどしっかりした約束でもない限り、
起きていてごそごそというのは激減したようで。
「健康的だと思わない?」
間近からそんな言いようを本人様から囁かれ。
話の内容より、
明かりを落とした中でのこと、
ついつい低められてて掠れていたお声でだったのがくすぐったくて。
「えっと…。/////」
ちょっぴり照れたよに視線を逸らしたブッダだったの、どう解釈したものやら。
「あ〜、どうせ早起きは出来ないくせにとか思ったでしょう。」
「あ、いやいや、そんなことは…。」
そういやそうだと言われて初めて気がついたくらいで…なんて、
拗ねたらしい人相手にならば微妙なところを言いかかりつつ、
慌ててお顔を上げて見上げたイエスの表情はといや、
「そんなことは?」
不貞腐れるどころか、ふふーと楽しそうに微笑っているだけ。
ちょっと意外で “あれれぇ?”と大きな深瑠璃の双眸を見開けば。
そっぽを向きかかってた愛しいお顔を
こっちへ向けたかっただけだったらしいヨシュア様、
ますますのこと笑みを濃くして、その口許をお髭ごと弧にたわめ、
「どうしたの?」
ブッダの心持ちなぞ半ば判っているのだろうに、
そんな訊き方をしつつ。
上になっている方の手を伸べて、
螺髪の下にすっきりと覗くふくよかな耳へとそおと触れる。
「あ…。///////」
このくらいのタッチには、
このごろでは“いぃい?”といちいち訊かなくなったイエス。
ブッダにしても このくらいは いけなかないけど、
それでもさすがにドキドキが増して来るのは仕方がなくて。
だというのに、
無邪気な子供のするような
加減を知らないような触れ方じゃあなくて、
いたわるような、触れるか触れないかというよな
繊細な心遣いを感じる撫でられ方なのが、
“…そこまで気を遣うことはないのにね。”
くすぐったいのは撫でてくれる感触からだけじゃあないというに、
ふんわりと笑うブッダなのへ、つられるようにイエスも柔らかく微笑んで。
早めに敷いた二組の蒲団は、狭いからというのを口実に今宵もぴったり密着されており。
このごろの明け方がどんどんと肌寒くなって来るのに合わせ、
肌掛けも飛び越しての秋対処、
元は綿入りだったのが、ちょっとした奇跡が働いた結果、
羽毛のそれへと転変しちゃった掛け布団とクラスチェンジされてる下にて。
今はまだ少しほどの距離を挟んで向かい合い、
何てことない会話を交わしていた二人だけれど。
「…。」
くすぐったいのへか時々身をすくめて甘く笑うブッダなの、
間近で見ているうちに落ち着けなくなったらしいヨシュア様。
横になってた床に肘をついて軽く身を起こせば、
持ちあがった拍子の羽毛布団から、
カサコソわしわしという木綿のカバーの乾いた囁きが立ち。
それほど思い切った動作でもなかったというに、
如来様の表情にほのかな“え?”という色合いを滲ませる。
勿論のこと、警戒とか、ましてや恐れたり怯えたりするような
拒絶の類のそれじゃあなかったのだが、
「いやあのその。…えっと、あのね?」
自分でもちょっぴり衝動に駆られてるなという思い当たりがあったのか、
イエスの側が自制をし、身を乗り出しかけて止まったところへ、
「…おいで、じゃないんだ。//////」
含羞みの差したたどたどしい言い方がもうもういけません。
そういや、いつもだってイエスの側からお誘いの水を向けるには違いないのだが、
まずは“おいで〜vv”と腕を広がる真似っこをしてブッダを招いてなかったか。
それが “互いに了解してます”という提示というか、
阿吽の掛け合いようなものとなってたはずが、
今宵はそれをすっ飛ばしたその上、自分から身を寄せんとしてきたイエスだったので、
やや性急だったコトの運びへ、あれあれあれとじわりとした恥じらいが沸いた彼だったらしく。
ご、ごめんね。びっくりしちゃった?
ううん。
私の方こそ、揚げ足取りみたいなこと言ってごめん。///////
ドキドキこそすれ、いやだのおっかないだの、思うはずないでしょと、
唇をうにむにと軽く噛みしめ、それでも視線は逸らさずにいるブッダなのへ、
“うあぁ、そんなお顔するの反則〜。////////”
薄暗がりの中でも透くような白い肌なのは見て取れる。
そんな肌のすぐ下へさっと淡い緋色が差して
むずがる手前のような含羞みのお顔なんかされた日にゃ。
嫌いなわけないでしょと、なのに叱られてるような、
そんな甘い八つ当たりをしてくる彼なのが何とも可愛くてしょうがなく。
「じゃあ、いぃい?」
途中停止していたその身、薄く浮かせたままだったところから、
むくりと起こし直したイエスが、そのままそおとのしかかって来るのへ。
それこそ今宵はブッダの側が双腕を開く格好で、
迎え入れての身を重ね合う。
重くない? 痛くない?
そこはいつものように聞くイエスなのへ、
大丈夫だよとかぶりを振って。
すると、
“あ…。///////”
見つめ合ってたイエスの眼差しがすうと薄く細められ、
それを見つめていたブッダの側も
つられるように長い睫毛をゆるやかにゆるやかに下へと降ろす。
昼間の平生だったなら、どうかした?と朗らかに訊き返すか、
同じような意味合いから目を丸く見張ってたところなのにね。
“これも慣れたってことなんだろか。”
眸をつむれば優しいキスをしてくれるのだと、
それを嬉しいと求める心地があることが。
そうと型通りに受け止めれば さすがに恥ずかしくはあるけれど。
“…あ。//////”
頬のすぐ間近へ相手の肌の微熱を空気伝いに感じ、
甘い吐息に気付いたそのまま、少し乾いた感触が唇へと重なって。
やさしい口づけが降り落ちたのと一緒に、
二の腕の傍から差し入れられた手がするりとこちらの背中へ回されて。
ああ、胸同士がくっつくほどぎゅうと抱きすくめられていくのが心地いい。
より密に一つになりたくて、こちらからも手を伸ばしてイエスのシャツへとしがみつけば、
彼の堅い筋骨の感触がシャツと甘い体温の向こうから感じられ。
だがだが、手さぐりするよに探れたのもそこまでで、そこから先があいまいになる。
時々ついばむ悪戯も見せつつ、
おまじないみたいに愛しい愛しいと囁かれるよな優しい口づけが、
とても甘くて心地よくて。
離れかかると 待ってとねだるみたいに呟くこちらへ
ちゃんと引き戻されてくれる誠実さが、
どんどんと初心な如来様を甘やかしてゆく。
恥ずかしいのと嬉しいのとが綯い交ぜとなり、
含羞みからだろう胸の奥が切なくて、でもそれすら嬉しい気持ちへと塗り替えられて。
「あ…。//////////」
背中に回され、よしよしとゆっくり撫ぜてくれる手がまた、
気持ちがよくってしょうがない。
その手が重くないよう、少し反らせて薄く浮かせた格好でいることで
より密着しているイエスの胸や背中は、
日頃少し離れて視野に入れているときは ずんと細く見えもするものが、
こうして直に触れ、しっかとくるまれていると
何て頼もしいのだろかと、安堵するばかりとなるのも不思議なことで。
誰にもすがらぬ自負があるのとは別物、
ああなんて安らげるのかという まろやかな陶酔に意識が浸り切る。
それがどれほど心地いいかとついつい口からこぼれかかったそこへ、
「気持ちいいなぁ。」
え?え? 今キミ何て言いました?
それともこれって、私の声?と。
ブッダがあれれぇと感じたそのまま、甘く潤んだ瑠璃色の視線を上げれば、
淡い玻璃色の視線が柔らかくたわめられているのとかち合ったそのまま、
やんわりと搦めとられて剥がせなくなる。
「だって優しく包み込まれてて、
キミからの大好きって気持ちが抱き留めてくれてるって感じられて。
…あ、これはさすがに自惚れすぎ?」
いっけないと反省しかかるイエスなのへは大急ぎでううんとかぶりを振って見せ、
「というか、どうしてそこまで判るのさ。////////」
私も今そう思ってたところなのにィと、
小声で付け足し、
「私こそ、イエスからこうやって抱きしめられると、
独占されてるって感じられて、
これ以上はなく、あのその…愛されてるんだと思うし、
それがとっても幸せだ。」
光の眷属だからこそ、無尽蔵に抱えておいでの
誰へも分け隔てのないアガペーという愛情とはすっかり別物。
あなたにだけだよという特別な愛をそそがれて、
抱きしめてもいい?口づけしてもいい?と、
やはり特別な…あなたが欲しいという独占を示されて。
しかもそれは、他でもない
こちらからも愛おしくてならないイエスからだなんて。
本来宿してはならぬ想いなのに、
それを惜しみなく与えられるのが嬉しくてしょうがない。
とはいえ、
「えっと、あの…っ。////////」
紛うことなき事実だというのに、
やっぱりまだまだ口にするなんて恥ずかしくって。
聞いていたのはイエスだけだのに、
すっぱりと言い切ったその途端、
耳から頬から熱くなり、
猛烈な恥ずかしさがこみ上げて来て、
“あ…。///////”
イエスからの視線と、嬉しそうな微笑みとが、
視野に入ったのとほぼ同時、
螺髪がふさりとほどけてしまい。
それは豊かでつややかな、深色の髪が一気にあふれて、
枕元から向かい合うイエスの肩へまで、
くるみ込むよに広がってしまう。
「ブッダ…。」
自分の身が起こした反応へ、
どうしようとばかり、
深瑠璃色の双眸を見開いて真っ赤になってる。
そんな無垢で不慣れなところがまた、
ああもうどうしてくれようかと、愛しくてならない可愛い人。
しかも、あのね?
「大好きだよ。愛してる。」
感極まってぎゅうと抱きすくめれば、
「…もうもう、どうしてそんなに甘やかすの。///////」
潤みの中に溺れそうになってる視線が、縋りつくよに向けられて。
甘やかしてないよぉ
嘘。
随分な幼子みたいに、
口許をとがらせる頑是ない様子にドキドキしながら、
何でそう思うの?
出来るだけそおっと聞いてみたらば、あのね?
「だっていつだって、イエスが先に好…きとか言うから、/////」
甘やかすと怒りながら、でもまだそうという割に、
何度も口には出来ないか、えいと思い切るよに好きという一言を言ってから、
「私、そのあとで“私も”としか言えないじゃない。」
それが甘やかしだと言い放つ、
もうもうもう なんて可愛い人だろう。
「もうっ、キミこそどれだけ私を嬉しがらせれば気が済むの。////////」
「え? あ…。/////////」
口髭がくすぐったいだろうなと案じたが、それでももう止まらなくって。
柔らかな唇へ、さっきよりも強い口づけを何度となく降らせてしまい。
ああもう、止められなくなっちゃったじゃないかと
他でもない愛しい人のせいにする、
そんな甘えを許してほしい、ヨシュア様だったのでありました。
〜Fine〜 15.10.05.
*何だか肌寒かったせいですか、
ただただ甘い話が書きたくなりまして。
そのくせ腐描写が別の意味から甘くて、中途半端ですいません。
何でこうも受け入れてくれるのかと、
そこがまた嬉しいやらお見通しなのが恥ずかしいやら、
舞い上がるほど幸せな、お互い様な最聖です。
桃やらブドウやらイチジクやら、無駄に実らせてないといいのですが。(笑)
:めーるふぉーむvv
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